笑顔の下の本音をさらし、心の奥底の情念をむき出しにし、意のままにならぬ世間をぼやき、たいしたことも無い日常をご報告するブログです。

オーストラリアの青い空
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おーあお

Author:おーあお
1990年より在豪、6年シドニーに住んだ後、メルボルンへ。
嫁は英国人、息子はオージー。そして私は日本人。国籍もバラバラなら思想もバラバラ、何もかもバラバラなまとまりのない家族です。
唯一の共通点は、猫好き♥


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ワーホリの覚醒3色違いのチェリーブロッサムズ15

2012/12/22 00:00|連載小説ワーホリの覚醒3TB:0CM:0
望詩は再び餌の小魚を針につけ釣り糸を垂れた。
潮が満ちてきてさっきまで見えていた碧岩の殆どが漣の下に隠れている。
陽はパラマタリバーの向うに沈む寸前だった。
またコツンと当たりがあった。
さっきと似たような引きで、揚げてみるとさっきよりも少し大きめのジョンドリだった。

「上手いものね…」
とまた後ろから日本語が聞こえた。
振り向いてみるとなんとそこに姉小路幸が立っていた。
「なんで幸ちゃんがここにいるの?」
幸は確か高級地区のローズベイに住んでいるはずだった。
その彼女とまさかダウンタウン ライクハートで再会しようとは…。
「偶然通りかかって…と言っても信じてくれないよね…」
と俯いた幸の顔は酷く疲れて見えた。
「貫斗君?」
「そう。彼最近態度がおかしかったから監視してたのよ―」
「まだつきあってたの?」
「うん…そう思ってた…」
「別れなさいよ、あんなやつ…」
と望詩が言ったとき魚が暴れて海に落ちそうになった。
望詩はそれを押さえ針を抜きクーラーボックスの中へしまった。
このクーラーボックスもゴミ捨て場で拾ってきたものである。

「彼、あたしの事何か言ってなかった?」
幸はロングスカートの裾を気にしながら望詩の隣にゆっくりと腰を下した。
金持ちの娘らしい品のある仕草である。
「あなたの事ねえ…」
望詩は言うか言うまいか迷っている。
「お願い、どんな事でもいいの教えて…」
真剣な眼差しでそう懇願されて望詩は彼が“男女(おとこおんな)”と言ったと話した―。
「そう…やっぱり…」
幸は暫く俯いて沈黙し、やがてシクシクと泣き始めた。
それはただ悪口を言われたから…という泣き方ではなかった。
胸の奥から搾り出すような、絶望的な慟哭であった。
何故幸がそこまで取り乱すのか、望詩にはわからない。
貫斗なんかに振られても彼女ならすぐに新しい彼氏が見付かるだろう。
それともあんな性悪を心底から愛していたのだろうか?

少し泣き止んでから訳を聞こうと思ったが、待てば待つほど幸の嗚咽は激しくなった。
「一体どうしたの幸ちゃん? あんなスカした男、どうでもいいじゃない…」
と望詩は幸の肩に手をかけた。隣では犬が不思議そうな目で二人を見ている。
幸はそれには答えず、溢れ出る涙を拭きショルダーバッグからパスポートを取り出した。
そして顔写真のページを開いて望詩に見せた。
辺りは大分暗くなっているが文字の識別は出来る。
「何?ただのパスポートじゃ…」
とまで言った望詩はそのパスポートを引き寄せじっと凝視した。
「ど、どういうこと!?何であなたが幸男なのよ!?」
パスポートの顔写真は確かに彼女なのに名前だけが幸男になっているのだ。
幸はふぅーと大きくため息をつき足元の小石を摘んで海に投げ入れた。
「あたしね、生まれた時両方ついてたの。雌雄同体。英語ではHERMAPHRODITE(ハーマフォロダイト) って言うのかしら…」
幸はアイロンコーブの夕凪を見ながら悲しげに目をしばたたかせた。

「そんな…」
望詩は今までそういう人間がいるとは聞いた事があったが実際に会うのは初めてだった。
「あたし、パパが40歳を過ぎてから初めてできた子でね。どうしても跡継ぎにしたかったらしいのよ。それでパパはあたしに男として生きる事を義務付け、幸男と名付けた―」
幸は自分の身の上を震える声で語り始めた。
「でもね、小学校も高学年になると男の子が好きになってどうしようもないのよ。それに気付いたパパは中学からあたしを男子校に入れた―」
そこで幸は言葉につまり再び目からどっと涙を溢れさせた。
「どんなに辛かったか…頭を丸刈りにされて、カラスみたいな制服着て、自分のことを俺って…その時確信したのよ…あたしは男じゃない、女なんだって…幸せな男じゃない、幸せな女になりたいんだって!」

望詩は黙って聞いている。
すぐ側でマレットが大きく跳ねその水音が薄暮の水辺に響いた。
「何度も死のうとしたわ…でもその度にママに助けられて…ママが手配して外国で切ったのよ。それで高校からは普通の共学に通ったわ。初めてセーラー服を着た時嬉しくってね、思いっきり短くして街を歩いた。
すぐに男の子から声がかかってきたわ。
女を確かめる為に何人もとつきあった…最初は可愛がってくれるの。でもね…本当に好きになって真実を打ち明けると…みんな心が私の元から去っていくのよ…」
「心がって?」
「小遣い欲しさに、あからさまに別れないって言う事。貫斗君もその一人ね…あの車もあたしが買ってあげたの…」

望詩は暫く唖然として言葉が出なかった。
全てに恵まれた完璧なお嬢様と思っていた幸にこんな悩みがあったとは…
「ごめんね、久しぶりに会ったのにこんな話して…」
幸はまた袖で涙を拭きながら言った。
「いいのよ。でも…あたしにはまだ信じられない…あなた可愛いもの」
と望詩は幸の顔を確認するように見た。
「可愛くてもね…半分男なのよ所詮…触ってみて…」
幸は胸のボタンを外すと、片手で望詩の手を掴み自分の胸に押し付けた。
「あ、硬い…」
と反射的に言ってしまって、望詩はシマッタと顔をしかめた。
「そうなのよ…硬いのよ…男の子みたいに…あなたのは?」
幸は今度は自分の手を望詩の胸にあてがった。
「やわらかい…あたしもそんな胸がほしかった…」

その後、幸はタクシー運転手にもう少し待っていてくれるようお願いし、望詩と犬と夕食を共にした。
望詩は釣ったジョンドリの鰭を鋏で落とした後、手際よく三枚におろし、BBQ台の上で焼いた。
そのジョンドリの白身を食べながら幸は英語学校で望詩に冷たくした事を詫びた。
すべて貫斗の意を汲み、彼に気に入られる為だけにやったことらしい。
「だから、あんな奴別れちゃいなさい!」
幸は暫く俯いていたが、やがて顔をあげ
「うん…決心がついたわ」
とさっきまでとは別人のように晴れ晴れとした表情で言った。
「全てを打ち明けても愛してくれる人がきっと見付かるわよ!」
望詩は励ますように彼女の肩を叩いた。
「そうね…路男磨さん今何してるのかしら?」
「え?」
望詩の喉にジョンドリの小骨が刺さった。
「望詩ちゃん結構仲良かったから知ってるんじゃない?」
望詩はガーッと喉を鳴らてしその小骨を吐き出し
「さあ、風の便りに死んだって…」
と、よそ見しながら言った。


*この項は全部作り話ではなく、ワーホリの頃同じ英語学校に通っていた両性の女の子の話を元にしています。
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