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オーストラリアの青い空
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おーあお

Author:おーあお
1990年より在豪、6年シドニーに住んだ後、メルボルンへ。
嫁は英国人、息子はオージー。そして私は日本人。国籍もバラバラなら思想もバラバラ、何もかもバラバラなまとまりのない家族です。
唯一の共通点は、猫好き♥


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ワーホリの覚醒3公衆便所に住む女6

2012/09/09 00:28|連載小説ワーホリの覚醒3TB:0CM:0
雨は午後3時に止んだ。
障害者用トイレから外へ出た望詩は辺りを見回したが人っ子一人いなかった。
「仕方が無い…焼くしかないわ…焼いとけば明日も明後日も食べられる…」
力なくそう言った望詩は三輪カートを押してBBQ台の所へ行った。
袋を開いて肉を取り出し、その一つをまずオリュンポスに与えた。
「あ~あ、虚しいなあ…」
一人BBQほど哀れなものは無い。
「友達いません!」と世間に公表しているようなものではないか。

望詩は広い公園に唯一人ぽつんと肉を焼いている。
ジュージューと肉の焦げる音が辺りにこだまするかのように大きく聞こえた。
空には雲の切れ間から初夏の太陽が覗き、アイロンコーブを跨ぐように虹がかかっている。
その虹の下をくぐるようにペリカンが三羽、湾の小島に向かって飛んでいた。
「こっちへ来なさ~い!肉の一つや二つあげるわよ~」
と英語で叫んでみるがペリカンは来なかった。
代わりにマグパイとシイガルが群をなしてやってきた。
彼らは望詩の前後左右を取り巻きギャアギャアと催促するように鳴いている。
その声を聞くと、絶対にやるものか!という気になるから不思議である。
「あっちへいけ!」
望詩がトングスを振りまわし、犬をけしかけて追い払っていると、後ろで「肉くれよ」と人間の声が聞こえたような気がした。
空耳か?と思って振り返って見るとランニングパンツだけで上半身裸の男が三人立っていた。

何れも若く褐色の肌が望詩の目には眩しかった。
〈イタリア系好き…〉
と一瞬うっとりしたがすぐ我に返り
「ペリカンはタダだけど人間は違うわ。ステーキサンド4ドル、ホットドック2ドルよ」
と、にこやかに言った。
「なんだタダじゃないのか? ま、いいや、みんな来るまで間があるからな。ステーキサンドくれ」
サッカーボールを持った男が言った。
「俺も…」
あとの二人も言い、サッサと金を払った。
手のひらに、2ドルコインが6枚乗っている…。
それが望詩には金の延べ棒のようにズシリと重く輝いて見えた。
「みんな来るって、ここで何をするの?」
ちょっと気になって望詩は聞いてみた。
陽が出ているとは言えグラウンドにはあちこちに水溜りが残っている。
「泥サッカーさ。スライディングすると氷の上のペンギンさ。面白いぜ」
「じゃあ、全員で22人になるの?」
「ああ、20人位は来るだろーな」
と言った筋肉質の男はボールをポンと空に向かって蹴った。
落下すると水しぶきがピシャっと飛び、そのボールに向かって一人が走って行きダイブした。
なるほどペンギンのようにシャーと滑っていく―。
〈フフフ、ペンギンさんもっとはしゃいで餌をいっぱい食べるのよ~〉
望詩の目の色は変わった。
障害者トイレからダンボールを持ってきて、ステーキサンド$4、ホットドック$2と書いてBBQ台の両側に立てかけた。

四時を過ぎてから意外なことが起こっていた―。
公園にやってきたのは泥サッカーの連中だけではなかった。
他にも多くの人がアイロンコーブ沿いの歩道に次から次へと現れるのである。
犬を連れて散歩している人もいれば、ジョギングしている人、また手をつないで歩いているカップルもいた。
そういう人達が望詩のダンボールサインを見てはやってきて不思議なほどに買ってくれるのである。
「何故こんなに多くの人が日曜の夕に歩いてるんですか?」
と何人かに聞いてみたが、一様に他にすることが無いから―との答えが返ってきた。
客は列が出来るほどでは無かったが途絶えることなく来た。
驚いた事に誰も公共のBBQ台を使って商売している事を咎めず、その理由すら聞かなかった。
その代わり、笑顔で「サンキュウ」と感謝してくれる人は多かった。
〈この国は愛想が悪い店員は多いのに、愛想がいい客は多いなあ…〉
望詩は変な所に感心しつつ、汗を拭いながら肉を焼き、最後は遊び終えた泥サッカーの連中が残り全部買って完売した。

「やった、やったわ!」
自分の力で金を稼いだ―。
今までに味わった事の無い達成感だった。
望詩は$600になった売上金を大切に懐にしまい、塒である障害者用トイレに引取った。
ちゃんとした宿に泊まろうと思えば泊まる事ができる。
だがトイレ住まいでも、犬と一緒ならば怖く無いし、特に不自由も無い。
苦労して生きてきた彼女は無駄金を使うのを極力嫌った。
儲けた金でシャワーヘッドを買いたかったが、店はもうどこも閉まっているだろう。
まったく不便で気のきかない国ではあるが、それだけビジネスチャンスがあるとも言えた。
「もしやこの国では…人が休んでいる時に働くだけで生きていけるんじゃないかしら…」
と考えながら犬と並んで眠りについた。
心地よい疲労が体を包んでいた。
「路男磨君…そんなとこ恥ずかしい…でもやめちゃイヤ…」
望詩は楽しい夢を見ていた。
ダンボールの下のコンクリートは昨夜ほど冷たく感じられなかった。
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