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オーストラリアの青い空
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おーあお

Author:おーあお
1990年より在豪、6年シドニーに住んだ後、メルボルンへ。
嫁は英国人、息子はオージー。そして私は日本人。国籍もバラバラなら思想もバラバラ、何もかもバラバラなまとまりのない家族です。
唯一の共通点は、猫好き♥


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ワーホリの覚醒2赤い唇4

2012/07/29 02:00|連載小説ワーホリの覚醒2TB:0CM:1
少し冷たい風が肌に心地よかった。
麗蘭も路男磨と並んで駆け、時々気持ち良さそうに髪を掻き揚げている。
どうやらご機嫌は完全に直ったようだ。
彼女といるとこの毎日見慣れている野山の景色が全く違って見えた。
それはやはり、彼女の体から発散される高貴なオーラのせいだろう。

路男磨は麗蘭と電話で話して以来、自分というものを客観的に見ようとしていた。
19歳。
普通の若者ならば、あれもしたいこれもしたい、あれもできるこれもできると自信に満ち、我が世の春を謳歌しているだろう。
しかし自分は普通ではない。
トゥーレットバイポーラー*という恐るべき持病を持っている。
犯罪者となり、人生の大半を鉄格子の中で暮らすことになる確率も高いだろう。
加えて…人生の目標は無い…。
大学中退。
普通のサラリーマンには向かない。
かといって商才があるとも思えなかった。
弁も立たず、職人気質でも無い。
体力も人並み。
何か資格を…と言っても何がしたいのか、何が出来るのかもわからない。
なるほど、今だけを見れば乗馬学校の生活は楽しいし、乗馬も上手い方だ。
しかしそれが何になる。
上手いと言ってもジョッキーに成れるほどではなく、調教師になりたいというわけでもない。
いわば食につながらない遊びであった。
乗馬はただ単に楽しかった思い出として残るだけだろう。
要するに将来に繋がる事は何もしていない。

―と実は昨夜寝付く前も考えていた。

少し前を走っていた麗蘭が馬をとめた。
路男磨も手綱を引き彼女の横に並んだ。
その彼に彼女はえもいわれぬ笑みを投げかけた。
〈この将来性の無い男のどこがいいのだ?―〉
しかも彼女は持病のことを知っている。
いや、知識として知っているのではなく実体験を通して知っているのである。
以前二人きりの時に持病が発病し彼女を犯そうとした。
本来ならば、それでバイバイだろう。
だが彼女は違った。逆に自分の事を気遣ってくれ、一緒に治療に取り組もうとし、しかも2ヶ月も無視していたのに、それも咎めず、自らこんな山の中へ会いにきてくれている。
〈俺のどこに、それだけの価値と魅力があるのだ?…〉

麗蘭は絵に描いたような令嬢で、彼女の両親もまた社会的に高い地位にあると言う。
それに比して路男磨の両親は平凡な小市民だった。
古い考え方かもしれないが、家柄も釣り合わない。
〈相手が俺じゃあ彼女の両親もがっかりするだろう…いや、きっと大反対するはずだ…〉
麗蘭に返した微笑とは裏腹に彼は頭の中で決心していた。
〈今日で別れよう―〉


その決意を声に出して伝えようとした時、彼女がひらりと馬から降り、膝を折って辺りに群生するラベンダーの花を摘み始めた。
路男磨は虚をつかれ暫くその様子を眺めていたが、自分もまた馬から降りた。
「レイラ…」
彼は彼女の背中に苦しげに語りかけた。

「ほら、いい匂い…」
くるりと振り向いて立ち上がった彼女は手に持っているラベンダーの束を路男磨の鼻先につけた。
「これを枕元に置いて欲しいの。この匂いが消えるまでにまた会いに来るわ。それまではこの花を私と思ってね」
と路男磨の目を見つめ優しげに言った。
路男磨は言葉に詰まった。
その無垢な視線に、「別れよう」と伝える事はできず、「ありがとう」とそれを素直に受け取った。


当時、週末ミタゴンからシドニーへ向かう列車は朝夕の二本しかなかった。
夕闇迫るミタゴンの駅に彼女を送っていく。
陽が丘の向こうに隠れると、辺りは急に寒くなって二人は自然に肩を寄せ、手を握り合って歩いていた。
ほんの半日ほど一緒にいただけなのに、何か一ヶ月も二ヶ月も一緒にいたような気がした。

ホームには誰もいない。
風が吹き抜けて一段と寒く感じた。
昼間もう少しで「別れよう」と言いかけたのに、いざ離れるとなると寂寥の思いが込み上げてきた。
お互いに同じ想いだったのだろう。
握っている手に一層力が入った。
電車の警笛が聞こえて、4両連結の車両が入ってきた。
「じゃあ、また来るから…」
「待ってるよ…」
電車に乗る直前、二人は震える唇を合わせた。
それは麗蘭のファーストキスであり、路男磨にとっても初めての心のこもったキスだった。

麗蘭が過ぎてゆく窓から手を振っている。
路男磨はホームの端まで走り、電車のテイルライトが見えなくなるまでそこに立っていた。


麗蘭の去った後、路男磨は足早に駅のトイレに入った。
麗蘭は一度もトイレに行かなかった。
だから自分だけ行くのは格好悪いと思って実はずっと我慢していたのだ。
用を足した路男磨は手を洗いふと鏡を見た。
「な、なんだこの顔は!!!」
顔の下半分が赤い口紅で覆われ、それが汗で少しハゲ、見るも無残な姿になっていた。
「麗蘭は、この顔とキスをしたのかっ!?」
ガーンと脳天を殴られたような衝撃を受けた。
堪らなくなってまたホームの端まで走った。
線路が夕闇の中に消えていく―。
「レイラ…」
路男間は線路に飛び降りた。
「うおおおお…」
彼はその線路をシドニーに向かって全力で駆けていった。


*トゥーレットバイポーラー : 路男磨の持病。発病するとトゥーレットシンドロームとバイポーラディスオーダーの交錯した態を為す。奇言を吐き、異常なハイテンションによる多重人格症となる。大抵の場合、狂ったレイピストとなる。
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ぱんぷきん #-|2012/07/30(月) 10:27 [ 編集 ]
ブラボー
楽しみにしています。
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