笑顔の下の本音をさらし、心の奥底の情念をむき出しにし、意のままにならぬ世間をぼやき、たいしたことも無い日常をご報告するブログです。

オーストラリアの青い空
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おーあお

Author:おーあお
1990年より在豪、6年シドニーに住んだ後、メルボルンへ。
嫁は英国人、息子はオージー。そして私は日本人。国籍もバラバラなら思想もバラバラ、何もかもバラバラなまとまりのない家族です。
唯一の共通点は、猫好き♥


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ワーホリの覚醒2夜のハイウェイ3

2012/02/25 23:02|連載小説ワーホリの覚醒2TB:0CM:0
アデレードの市街を抜けてからもう5時間以上走っている。
まわりは漆黒の闇で対向車はここ半時間ほど一台も見ていない。
ガソリンスタンドもガス欠になったらどうするのかと不安になるほどに見かけず、飯屋一軒すらもない。
その代わりおびただしい数のカンガルーが道の両脇にマラソン見物のように並んでいた。
それがたまに飛び出してきて、トラックはそのカンガルーをボッコンボッコン跳ね飛ばしながら進んでいた。

州境を越えビクトリア州に入りミルドュラという内陸の町を抜け、ハイウェイ20を東へ。
助手席のベックとスリーパーのクレイグは既にぐっすりと眠っていた。
路男磨は乗り物の中で眠れない性質であるから、ずっと窓を開けて外を眺めていた。
見えるものは満天の星以外に何も無い。
この世にこんなにもあったのかと思うほどの星群が夜空を埋めつくし地平線との境目をくっきりと塗り分けていた。
「ああ、俺はオーストラリアにいるんだ…」
改めてその感慨に浸っていると、スポッと一匹の羽虫が口の中に入ってきた。
「ゴクリ…」
感触から言うと銀蝿だったが、それはあっという間に喉の奥に消えた。
〈確か蝿一匹は7カロリーと聞いたが…〉
と静かに窓を閉めると、フィルが鼻くそをほじりながら、
「お前はチャイニーズか?」
と聞いてきた。
これまでに何度もされた質問である。
今でもそうだが、この当時は今よりも、アジア人を一まとめにチャイナマンと呼んでいる者が多かった。
「いいえ、ジャパニーズです」
もう一度ゴクリと唾を飲み込んでから答える。
まだ変な感触が胸の辺りに残っていた。
「そうか、ワシには見分けがつかんよ」
「そうでしょうね。俺にもヨーロッパ人の見分けはつきません」
「じゃがな、ワシは日本人が好きじゃ。大好きじゃ」
と思わせぶりに言った。
〈まさか…〉
と斜めに彼を見る。
間抜けな横顔だ。
どう考えてもその雰囲気は感じられないが念のためシートベルトを外した。


ウインドスクリーンにはさっきからおびただしい数の羽虫が叩きつけられていた。
窓も開けられない状態で、フィルが「ファーック!」と言いながらワイパーを何度動かしても、ガラスはすぐに汚れていった。
春先は毎年こうだ―と彼は憎憎しげに言う。
その間にも羽虫は灰色の雪のように窓に累々と積もっていく。
〈もし霊魂なんてモンがあったら、オッサンとっくに地獄行きだぜ―〉
と消えていく小さな命を儚んでいると―
重なり合った死骸の向うに、何かボーッと鬼火のような光が見えた。
〈虫の怨霊か!?〉
とは無神論者の路男磨は思わないが、真っ暗闇にポツリと浮かぶその光が不自然で、ずっと注視していると近付くに連れて輪郭がハッキリしてきた。
どうやらガソリンスタンドらしい。
小さなスタンドで見かけもみすぼらしいが何故か多くのトラックが赤土の駐車場に止まっていた。
数にして優に20台はあるだろう。
フィルのBダブルもこのスタンドのディーゼルの方に滑り込んだ。
ん?と、首を伸ばしてチラッと見ると燃料ゲージは依然4分の3より上を指している。
〈何故給油するのだろう?〉
と疑問だったが、フィルには聞かず、気を利かせてキャビンから降りてウインドスクリーンのワイピングを始めた。
バウザー横に置いてあるハンドワイパーでこびり付いた虫をゴシゴシと落としていく。
だが一度乾いてしまった残骸はなかなか落ちない。
何度もハンドワイパーを洗ってとりあえず運転席の方だけきれいにした時、フィルが給油を終えてトラックを駐車場のほうへ移動させるべく運転席に座った。
もう終わったのか?とバウザーのメーターを見ると300リッター、210ドル分しか入っていない。
このトラックの燃料タンクは450リッターが4つで1800リッター。シドニーまでノンストップも可能と彼は言っていたが…。

その後彼に誘われて一緒にロードハウスに入った。
二人だとどうも…と思いトラックで寝ているクレイグとベックを起こしにいこうとすると
「寝ているやつは放っておけ」
と彼は言い、結局二人だけで食事する事になった。
中は自家製と思われる丸太を削ったテーブルが並んでいて多くのトラッキーがハンバーガーやチップスを食っていた。
トラッキー達は大声で大きな腹を揺すって話しているが、さすがに誰もビールは飲んでいない。
ただ何人かは白い錠剤を服用していた。
その錠剤、フィルに聞くとアンフェタミンと言い不眠効果があるという。
彼の知り合いにその薬を飲み続けて一週間不眠不休で働き、薬の効力が切れた途端コテと寝てしまって大事故を起こした奴がいるとも教えてくれた。

フィルはカウンターでステーキとチップスを二人分注文した。
値段は二人で$10とべらぼうに安い。
「そのくらい俺が払います」
と路男磨が財布を出すと、彼は手でそれを制止し、カウンターのオヤジに向かって
「いつもみたいにレシート2枚頼むわ」
と意味ありげにいった。
中の親父は心得たもので、「あいよ」と既に用意してあったかのようにすぐレシートを出した。
乱雑な手書きのレシートだがそこに書かれていた額は、なんとディーゼル$1000、晩飯$100であった。
路男磨がポカンと口を開けていると、フィルはニカリと彼にウインクした。
「そんなにキリがよくていいんすか?」
「ええんじゃ、キリのいいとこまで負けさせたと言うんじゃ」
「バレないんすか?」
「相手は日系企業じゃ。だから日本人が大好きなんじゃ。わはははは…」
と歯の抜けた口をあけて笑った。
どうやら荷主は日系の自動車メーカーであるらしい。
この頃、日本はバブルの絶頂期で、オージーは日本企業も日本人も皆大金持ちと思い、メディアも日本人を相手にすると得をするといった風潮を伝えていた。
得というよりはこの場合詐欺であるが路男磨はその実践を目の当たりにしているのである。
「日系以外は?」
「あんまりぼれんなあ。欧米系は人を信用せん。他は金が無い。日本がベストじゃ、コンニチハ、アリガトー、ハイッ― ガーンッ!」
フィルは日本人の真似をして頭を深々と下げようとして派手に頭をカウンターの角にぶつけた。
「あ、いってぇ…」
彼は目を白黒させ、ハゲ頭を手で押さえた。
その指の間から血がタラタラと流れ出ている。
「……」
この程度のオッサンにぼられるようじゃ……
路男磨は日本の将来に不安を抱いた。

当時(1990)はアナログ時代の終焉前で、まだ携帯もインターネットもなくカードの普及率も低かった。
であるから田舎のガソリンスタンドはキャッシュ取引のみで、多くのトラッキーは、それをいい事にその都度会社をリップオフしていた。
彼らはあの頃をGood Old Daysと呼んでいる。
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