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オーストラリアの青い空
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おーあお

Author:おーあお
1990年より在豪、6年シドニーに住んだ後、メルボルンへ。
嫁は英国人、息子はオージー。そして私は日本人。国籍もバラバラなら思想もバラバラ、何もかもバラバラなまとまりのない家族です。
唯一の共通点は、猫好き♥


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ワーホリの覚醒―英語学校13

2011/11/10 17:40|連載小説ワーホリの覚醒1TB:0CM:0
それから一週間たった土曜日の午後。
路男磨はシドニー大学へ向かうバスの中にいた。
茶色の革ジャンパーに黒いマフラーとサングラス、頭には野球帽を被り、フットブリッジシアターの前でバスを降りた。
階段を上がり入り口のところでチケットを渡し中へ入る。
中は意外と広く、照明は暗かったが彼はサングラスを取らなかった。
既に前の方の席はほぼ埋まり、彼は一番後ろの席に座った。
「ほら、もっと早く出ようって言ったのに。アスオがぐずぐずするから…」
「すまん、どうしてもうんこが止まらなかったんだ」
すぐ後ろの通路で聞きなれた声が耳に入ってきた。
〈何で奴らがこんな所に…〉
アスオとミランダ、そしてもう一人がっしりとした体型の男がすぐ左前の座席に座った。

やがて全席が埋まり、天井の照明が消えた。
路男磨がサングラスを外した時、幕が開き、中世フランス貴族界の葛藤をテーマにしたミュージカル“Tentation de Versailles”が始まった。

ステージの中央に麗蘭がいる―。
彼女は音楽に合わせてドレスを舞わせかつ唄った。
その美しい声はホールに木霊し、観客は彼女の動きにあわせて体を揺らし、クライマックスでは涙を流した。
路男磨は瞬きもせず彼女の動きを見つめていた。
〈ああ、俺はこの美しい蝶の羽をもぎ取ろうとしたのか…〉
あの後、彼は自分の心の奥底に潜む残忍性に愕然した。
〈彼女、どんなにショックだっただろう…〉
実はあの後電話で謝ろうと思い、受話器を取った。
だがそれでは上手く気持ちが伝わらないような気がして、今日こうして会いに来たのだ。

盛大な拍手に送られ舞台は幕を閉じた。
ホールが明るくなり、人々が席を立つ。
彼女の演技は素晴らしかった。
舞台は無事に終わり、路男磨の杞憂は一先ず去った。
もう顔を隠す必要も無い。
彼は野球帽とマフラーを取るとポケットの中に捻じ込んだ。

路男磨は外に出てからぐるっと裏手に回って機材搬入用の大きなダブルドアの前に向かっていた。
そこは車が付けられる様になっているから、道に沿っていけば割合すぐに見つけることが出来た。
ダブルドアの片方が開いていてそこから白いクリノリンドレス纏った少女たちが出てくる。
その彼女らの最後に麗蘭とこの前ブルーマウンテンで一緒だった美貌の女の子が一緒に出てきた。
逃げ出したくなる衝動を抑え、路男磨は目を閉じ大きく深呼吸した。
目を開けた時、彼女もまたこちらを見ていた。
さっきまでの舞台の華麗さからは想像もつかない暗く冷たい視線だった。
路男磨は意を決し彼女に歩み寄っていった。

路男磨が近付いていくと彼女は視線をそらし脇を向いた。
見るのも汚らわしい―とその横顔が語っていた。
それは当然であろう、悪いのは自分なのだ…。
「素晴らしい演技だったよ」
路男磨は努めて明るく言ったが、彼女は目をそらしたまま無視して歩き去ろうとした。
「君に謝りに来たんだ。面と向かって一言詫びたかった…」
彼女の歩みが止まった―のは路男磨の言葉のせいではなかった。
気付くとすぐ後ろに、アスオとミランダ、それにがっしりした男が立っていた。
彼ら3人と麗蘭ら2人はそこで立ち話を始めた。
〈アスオとミランダが彼女と知り合い??〉
路男磨は完全に無視されている。
その彼の前で5人が仲良さそうに話をしている。
いや、正確に言うと4人だ。
麗蘭はアスオに対しては笑わなかった。
4人はネイティブの英語で談笑し、アスオは一見仲間はずれにされていた。
確かにアスオ以外の4人は彼とは雰囲気がまるで違う。
みんな美貌で育ちも良さそうに見える。
それに比べてアスオはその醜さも手伝ってスラムのドブネズミのような印象を受けた。
多分、麗蘭も知り合いになりたくないのだろう、彼を露骨に避けている。
暫くして彼らが歩き出した。
「レイラ、少し話せないか?」
路男磨は彼女の大きく開いた背中に声をかけた。
「私、犯罪者は嫌いなの!」
彼女は振り向きもせずにそのままの歩調で去っていった。

その後姿を路男磨は悄然と眺めていた。
「終わった…」
今日は春の訪れを告げるかのように風が強かった。
アスファルトの上にカランカランと空き缶が転がり、彼の足に当たって止まった。
「春か…」
空を見上げた。
ナイフのような筋雲が縦に並んでいる-。
「俺に春なんて来ないさ…」
彼は足元の空き缶を力なく蹴った。


シドニー大、フットブリッジシアター(昔)
PIC_0506.jpg
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