笑顔の下の本音をさらし、心の奥底の情念をむき出しにし、意のままにならぬ世間をぼやき、たいしたことも無い日常をご報告するブログです。

オーストラリアの青い空
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おーあお

Author:おーあお
1990年より在豪、6年シドニーに住んだ後、メルボルンへ。
嫁は英国人、息子はオージー。そして私は日本人。国籍もバラバラなら思想もバラバラ、何もかもバラバラなまとまりのない家族です。
唯一の共通点は、猫好き♥


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ワーホリの覚醒―英語学校10

2011/10/22 19:58|連載小説ワーホリの覚醒1TB:0CM:0
春の匂いが漂う海風と眩しすぎる午後の陽射しは今日の路男磨には心地よいものではなかった。
その陽射しを遮ろうと手を翳すと、椅子から立ち上がってこちらに向かって手を振っている女の子が目にはいった。
上には薄いジャケットを羽織っているが下はデニムのミニスカートだった。
そこから黒いストッキングを穿いた細い足が伸びている。
路男磨も軽く手を振って彼女に向かい合う形で座った。
ここはサーキュラキーのカフェ。
この当時フェリー乗り場の横にカフェは一つしかなく待ち合わせの場所としては分かりやすかった。
路男磨の席からは、オペラハウスとハーバーブリッジの両方が見えた。
きっと彼女が気を利かせたのだろう。

「よく撮れてるね」
路男磨はA5大に引き伸ばされ木のフレームに入れられた写真を手にとって見た。
二人とも幸せそうな顔をしている。
一見どう見ても恋人同士だった。
「ごめんなさい。急に呼び出して」
フラットホワイトが二つ運ばれてきていい匂いがあたりに漂う。
それを口に運びながらながら路男磨はちらりと彼女を見た。

改めて二人だけで会って見ると身の置き場も無いほどに緊張した。
実は路男磨はこれまで女の子とデートしたことは無い。
〈何か言わなきゃ…〉
と思うのだが適当な話題が出てこない。
彼女の微笑をたたえた目が自分を見つめている。
〈なぜ?〉
自分に気に入られる理由があるとは思わないだけに路男磨は戸惑った。
〈きっと彼女は律儀で親切でフレンドリーな子なんだ―〉
そう思い込もうとし、極力勘違いするのを避け、普通に振舞おうとした。
とはいえ、うかつな事を言って嫌われたくはない。
その守りの意識が作用して元々回らない口が一層硬くなっている。

「路男磨さん出身はどこですか?」
たまりかねて麗蘭が先に沈黙を破った。
「日本」
「……」
彼女はちょっと目を丸くした後ころころと笑った。
路男磨もあわせて笑ったが、事は笑い事ではない。
実は、一瞬彼の頭は真っ白になっていた。
ボケるつもりで言ったのではなく、自然と口から出たのだ。
〈まずい…〉
疲れると彼の奇言癖は発病する。
彼は自分の太ももを右手で強く抓った。
「兵庫県、姫路市さ」
彼は言い直した。
「そうですか、瀬戸内。お城があって、気候も良くていい所ですね」
「麗蘭さんは?」
「東京です。つまんないでしょ」
〈そだね〉
冷たく言いそうになって慌てて口をつぐんだ。
頭の中に思い浮かんだ事がそのまま口から出る―危険な兆候だ。
路男磨は目を瞑り大きく深呼吸した。
そんな様子を麗蘭は興味深そうに見ている。
「ところで麗蘭さんは…」
「レイラでいいわ」
「じゃあ、俺もロオマでいいよ」
お互いに笑みを交わすと頬の硬直もやや弛み肩の凍結も少し溶けた。

彼女は中学を卒業してすぐこっちに来たらしい。
年齢は18歳。シドニー大学の一回生。オランダ人と日本人のハーフ。路男磨とは一つ違いだった。
「それで名前が麗蘭なんだ」
と彼は最初に名前と電話番号を書いた紙をもらった時の事を思い出した。
「そう。でもオランダ語は話せないわ。ところで路男磨はイタリア人のハーフ?…じゃないわね」
麗蘭は路男磨の顔を見ながら言った。
「あたりまえじゃん。この顔でハーフは無いよ」
「じゃあ、ローマで生まれたとか?」
「いや」
「お父さんイタリア語ペラペラとか?」
「いや、関西弁しか話せないよ」
「じゃ、なんで?」
「さあ、ただそう呼びたかったんじゃないの」
事実路男磨も名前の由来は聞かされてない。
“男を磨いて大路を進め”
単純に読んで字の如くだと思っている。
だが、冷静に見て男の道を磨いているとは思っていない。
いつも持病と世間の目に怯え、ビクビクしながら生きている小心者。
それが路男磨の自己評価だった。

それから色々な事を話した。
彼女はテニスクラブに入っているらしい。
その点中高とテニス部であった路男磨とは話が合った。
大学の専攻は教養科で、将来は新聞社に就職したいと考え、留学に踏み切ったと言う。
それを中学卒業前に決断した彼女に路男磨は大いに感心した。
この当時はまだ、留学するにしても日本で大学を出てから…という考え方が主流だった。
だが自分がこっちに来て、それでは到底間に合わないと言う事を痛感している。
父親が欧州人であると言うこともあるが、その事に中学で気付き、決断したのはやはり賞賛に値するものだと思った。

彼女は声も美しく、よく通り、どもることが一度も無かった。
その話し方にも彼女の知性が溢れていて、少し話しただけで頭の良さを感じ取る事ができた。
彼女の英語は路男磨の耳には完璧に聞こえた。
その上この美貌。
ゆくゆくは新聞記者どころかニュースキャスターにさえなれるのではないか-。
彼女には輝かしい未来が待っているのだ。

麗蘭と話していると時間はあっという間に過ぎた。
腕時計を見ればもう五時。
そろそろシンデレラボーイの魔法も限界に達している。
今日はこのくらいにしてボロが出る前に帰りたい。
次はお礼に食事にでも誘おう―とフォトフレームを手にとって立ち上がろうとした路男磨に彼女が言った。

「今からテニスしません?」

断るべきであったであろう。
だが彼女の笑顔にNOとは言えなかった。


サーキュラキー
20071031circularquayrailwaystation.jpg
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