笑顔の下の本音をさらし、心の奥底の情念をむき出しにし、意のままにならぬ世間をぼやき、たいしたことも無い日常をご報告するブログです。

オーストラリアの青い空
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プロフィール


おーあお

Author:おーあお
1990年より在豪、6年シドニーに住んだ後、メルボルンへ。
嫁は英国人、息子はオージー。そして私は日本人。国籍もバラバラなら思想もバラバラ、何もかもバラバラなまとまりのない家族です。
唯一の共通点は、猫好き♥


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ワーホリの覚醒4同居5

2013/03/10 21:52|連載小説ワーホリの覚醒4TB:0CM:3
路男磨がそのレストランに着いた時は3時過ぎで、丁度午後の中休みに入ったのかドアの掛札はCLOSEDになっていた。
試しにそのドアをドンドンと叩いたが誰も出てこない。
掛札の下に書かれてある営業時間を見るとディナーは6時からになっている。
「あと3時間か…いや5時になったらスタッフは準備に取りかかるはずだ」
路男磨は仕方なくドアの前に座り込み、時が過ぎるのを待った。

4時半を過ぎたが誰も現れない。
目の前を走るミリタリーロードが込み始め、少し前のバス停には市バスが3台連なってとまっている。
そのバスから二人の女の子が降りてこちらに向かってくるのが目に入った。
二人とも一目でわかる日本人で、近付いてみるとうち一人はなかなかの美人だった。
年恰好から見て路男磨と同世代のワーホリだろう。
「荒木優さんですね?」
路男磨はその美人な方に声をかけた。
NGプレスの簿津編集者から、なかなかの美人と聞いていたからである。
「ええ、そうですけど」
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」

そのまま立ち話で路男磨は彼女にお茶会のことを聞いた。
彼女は一回浴衣を着て給仕しただけでそれ以降はお呼びがかからなかったという。
だがその割には、会のことをよく知っていた。
なんでも先輩から色々と聞かされたのだという。
「場所はポイントパイパーだな?」
「ええ、早く行ったほうがいいわよ。その子何回目?」
「何回目って…さあ、二週間くらい前に話した時にそのこと言ってたから…」
「じゃあ今日が三回目かもしれないわね。だったらちょっとやばいわよ」
荒木優の声のトーンがあがった。
「やばいって?」
路男磨はバス停に向かおうとして、その声音に容易ならざるものを感じ彼女を振り返った。
「あのお茶会さ、別名なんて言われてるか知ってる?」
「知るわけ無いだろ、場所すら知らなかったんだから…」
「別名ね、よかったぜパーティーって呼ばれてるのよ」
「よかったぜパーティ!?」

路男磨はミリタリーロードを走るバスの中にいた。
5時を過ぎ、渋滞は一段とひどく、バスは遅々として前に進まない。
「早く、もっと早く走れよ!」
路男磨の頭の中にはさっき荒木優から聞いた『よかったぜパーティー』の話が駆け巡っていた。
なんでもそのお茶会は、豪有数の大金持ちの御曹司が主催者で、彼の趣味はお代官様となり、着物を着た日本人女性を手篭めにすることらしい。
彼はお茶にも日本文化にもまったく興味は無いが、日本の時代劇を見て以来すっかりお代官様に憧れ、
「おれも同じことやりたい!」とお茶会に事寄せて美女に着物を着せ、「よいではないか」と帯をぐるぐる回して押し倒し、最後に「よかったぜえ」と露な下腹部に札束を投げつける。
それが三度の飯よりも好きになってしまったらしい。
手口は、一回目で物色、二回目で懐柔、そして三回目で豪華な振袖を着用させ、海に面した豪邸の庭先に繋留されたクルーザーに乗せ本懐を遂げるという。
女はNGプレスで募集したり、何人かの日本人がエージェントになっていて、いい女をよかったぜ御曹司のところへ給仕として送り込むのだそうだ。

「そうか!貫斗はエージェントなんだ。だからあんないい車に…」
路男磨の不安は募る一方だった。
なんでも対象となる女は美人であるだけでなくインテリジェントでなければならないらしい。
それで高卒ワーホリの荒木優は一回目で却下され命拾いしたそうだが、彼女よりはるかに可愛くてインテリな麗蘭はどう考えても彼のよかったぜ対象としか思えなかった。
「ああ麗蘭、2回目であってくれ!振袖を着るんじゃない!」
路男磨はバスの窓から見えるシドニーハーバーの向こう岸、ポイントパイパーに向かって叫んだ。
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ワーホリの覚醒4同居4

2013/03/04 19:26|連載小説ワーホリの覚醒4TB:0CM:0
下に降りるとちょうど、オレンジ色のBMWクーペがガレージから出て行くところだった。
ふと中を見るとなんと、運転しているのは力崎貫斗ではないか!
「おかしい…絶対おかしい…」
路男磨の胸騒ぎは張り裂けんばかりになり、ダッシュでそのBMを追った。
「おい待て!待てよコラ!」
路男磨は後ろのブートの所にしがみつくような格好で叫んだが、BMは逆にアクセルを吹かし、路男磨を突き飛ばすように走り出した。
しかしバックストリートは狭くそんなに飛ばせない。
路男磨はあきらめずにその後を追った。
ジョンストンストリートに出る交差点の赤信号でBMは止まった。
路男磨はそこで追いつき助手席のドアを開けた。
ロックはかかっていない。
「お前、麗蘭と一緒に住んでいるのかっ!?」
路男磨は顔を中に突っ込んで言った。
「ああ、今日まではな…」
意味ありげに貫斗はニヤリとした。
「今日までは?…どういうことだ?」
「今夜からあの女は男と住むのさ…」
「お、男って…」
その時信号がグリーンに変わった。
「どけよ、貧乏人」
そういい残し、オレンジのBMは去っていった。

「男?…男は俺のはずだが…」
路男磨はBMのテールを見ながらボソッと呟いた。
ついこの間話した麗蘭の口調に間男の匂いは微塵も感じられなかった。
彼女の声音は自分への愛情に満ちていた…としか路男磨には思い出せない。
「とにかく…早く彼女を救い出さねば…」
貫斗と一緒に住むなど飛んで火にいる夏の虫、いつか必ず酷い目にあうのは目に見えていた。


路男磨はクレイグのバチュラーユニットに向かって歩いている。
そこに昨日置いてきたバックパックを取りに行くためである。
だがその途中、さっき貫斗が言った言葉が耳に蘇ってきた。
「待てよ…あいつ確か…今夜って言ったな…今夜?…普通に考えたら今夜他の男に抱かれるということか…?」
路男磨は街を目指して全力で駆け出した。
不安と焦燥が彼を錯乱させやみくもに走らせたのだ。
「畜生!やっぱり昨日行っとけば…レイラーッ!」


街の中心まで走った。
タウンホールの階段に腰を下ろした時には、汗が前髪の先からぽたりぽたりと落ちていた。
「いるはずがない…」
この広いシドニーの街をどんなに一生懸命走り叫んだところで、麗蘭が見つかるはずはなかった。
路男磨はそこで暫く息を整えていたが、麗蘭がどこにいるのかは皆目見当がつかなかった。
とそこへワーホリと思われる女の子が現れて隣に腰を降ろした。
彼女はちらりと路男磨の方を見た後、ナップサックの中から新聞を取り出した。
その新聞は、英字ではなく日本語で書かれていた。
その新聞に目を這わせながら彼女はまた路男磨のほうに視線を投げた。
「それNGプレスですか?」
路男磨は声をかけた。
「え、日本人の方なんですか~!」
女は黄色い声で仰々しく驚いた。
〈しらじらしい女…〉
路男磨は思わずウププとなりそうになったが堪えて、新聞の記事に目を移した。
求人のページが開かれている。
そのページにひときわ大きく『お茶会着物給仕募集』と書かれている。
〈そう言えば、麗蘭のやつ着物着て仕事するとか言ってたな…〉
と最後に電話で話したときの事を思い出した。
「あの、ちょっと見せてもらっていいかな?」

その番号を控えた路男磨は、早速公衆電話からそこへかけてみた。
三度ベルが鳴って男が出た。
どこかで聞いたことのあるような声だった。
「あの、お茶会の住所を知りたいんですが…」
だがその男は、暫く沈黙した後すぐに切った。
路男磨はもう一度かけた。
だが次もモシモシの後すぐに切られた。
三度目は繋がらなかった。
〈あの声、貫斗に似ていたな…〉

路男磨はなんとか住所を聞き出そうとNGプレスに電話した。
編集者の簿津という男と話したが、住所は分からないが、そこで働いていた女の子を知っているから、聞いてみれば?と言われた。
その子は今、ニュートラルベイの日本食レストランで働いているらしい。
電話番号は分からないがランチもやっているから多分いるだろうとの事で、仕方なく路男磨はバスでニュートラルベイに向かった。

ワーホリの覚醒4同居3

2013/02/23 18:20|連載小説ワーホリの覚醒4TB:0CM:0
麗蘭は夜風に吹かれながら路男磨の来るのを待っている。
だがもう夜10時を過ぎたがドアのベルは鳴らない。
このマンションは西地区のアナンデールではトップクラスで、夜ベランダから東を見るとシティの明かりが綺麗だった。
NEC,SANYO,TOSHIBAと当時の日本経済を反映してビルの上には日系企業のネオンが目立つ。

その明かりを眺めながら麗蘭は長い髪を掻き揚げた。
「確か今日来るみたいな事言ってたけれど…」
と呟いた時、ラウンジルームの電話が鳴った。
「俺だけど、あいつ来た?」
「ううん、それがまだ…」
「そうかい、じゃ、早く帰らなくてもいいな。あいつ多分こないよ。君も明日は早いんだ、早く眠った方がいい―」
と言って男は電話を切った。

明日麗蘭はさる大金持ち主催のお茶会の給仕に出ることになっている。
その際着物を着用しなければならないそうで、その着付けに結構時間がかかる為、朝6時には出かけなければならなかった。
お茶会の会場はその大富豪の自宅で場所は豪最高級地区のポイントパイパー。
その広いパーティールームからはオペラハウスとハーバーブリッジを背景にシドニー湾の絶景が望まれた。
これまでも既に二度給仕に出ている。
その時は浴衣のような軽装であったが、今回はVIP専属の接待を任されるそうで、絢爛な振袖を着用する事になっていた。

「結局、来なかったわね…」
麗蘭が溜息交じりにベッドに入ろうとした時、玄関のドアが開いた。
「あら、遅くなるんじゃなかったの?」
「そのつもりだったんだけど、お客が用事があるとかでね。帰ってきたんだ」
と麗蘭の同居人は言った。
「ふう~ん…」
麗蘭の脳裏にほんの少し疑惑がよぎった。
彼はこれまでも路男磨とは親友だとか言いながら電話では絶対話さないし、名前も極秘にして欲しいと最初から麗蘭に要請している。
会ってからのお楽しみ…とは言っているが、今夜も何か路男磨がいないのを確認した上で帰って来たような気がした。
だが深くは考えなかった。
この給仕の仕事も彼が紹介してくれたのだ。
家賃は激安な上に仕事も紹介してもらって、彼は麗蘭にとっていわば恩人であった。
その恩人の事を少しでも疑ったり、悪しく勘繰ったりするのはたとえ口に出さなくても、礼儀に悖るような気がして、どこか胡散臭いものを感じながらも麗蘭は努めて彼を好意的に見ようとしていた。


翌日の昼過ぎ…路男磨はライクハートパークから少し歩いてバスに乗りアナンデールで降りた。
ジョンストンストリートを北に…麗蘭のシェアするマンションは、その通りで一番高いビルのペントハウスだと聞いている。
トップクラスといっても所詮西地区のアナンデール。
一階にはロビーもレセプションも無く、高さも五階建てでエレベータも狭いものだった。
路男磨は五階、4th Floor のボタンを押した。 

ドアが開いた。
そこには路男磨よりも背の高い男が立っていた。
「か、貫斗…」
「ふん、久しぶりだな…」
力崎貫斗は路男磨と目を合わさず、ぶっきらぼうにそう言ってエレベータに乗った。

〈あいつもここに住んでいるのか…〉
意外であった。
彼は英語学校で一緒の頃、キンクロに住んでいたはずである。
その当時、日本人の間では馬鹿ワーホリはシティーからキングスクロス周辺に多く分布すると言われていた。
逆にグリーブ、アナンデールの内西地区はシドニー大に近いせいか学生が多いとされていた。
バカホリの一人でありワルホリでもある貫斗には似つかわしくないエリアである。

〈その奴が…なぜ…〉
と思いながら401号室のドアをノックした。
だが応答は無い。
どうやら留守のようだった。
〈貫斗と麗蘭が同じマンションの同じフロアに…〉
偶然…とはとても思えない。
路男磨は込み上げてくるような胸騒ぎに襲われた。
彼はエレベータに乗りさっき降りていった貫斗の後を追った。

ワーホリの覚醒4同居2

2013/02/17 16:04|連載小説ワーホリの覚醒4TB:0CM:2
久しぶりの再会。
話は弾み路男磨はブタタマのお好み焼きを三枚も食った。
「もう行かなくちゃ。いくらだい?」
路男磨は縁の擦り切れた財布を取り出し代金を払おうとした。
「何言ってるのよ。とも…路男磨君は払わなくていいのよ!」
望詩はもう嬉しくて仕様がないと言った態度で路男磨の肩を叩いた。
彼女は“ともだち”…と言おうとして“路男磨君”と力を込めて言い直した。
そこに〈友達以上になりたいのよう〉という切実な願いが込められているのだが路男磨は気付かなかった。
「そうかい、悪いな。ギャラが入ったらどこか連れてってやるよ」
「うれぴー!」
望詩は路男磨の腕に縋り付いて喜びを表現した。
「すごいわね、レイバーズに出るなんて!あたし英語良く分からないけどあれ結構面白いわよ」
幸が横から口をはさんだ。
彼女は毎週のように望詩に会いにこのライクハートパークに来ているという。
「ま、いい演技しないと首切られるかもしれないけどね。でも望詩のほうがすごいよ。トイレに住んで商売するなんて…」
と路男磨は腕から離れない望詩の方を見て言った。
「すべてこのオリュンポスのおかげよ。この犬のお蔭でこれまで無事に生きてこれたのよ」
と望詩は大人しくBBQ台の横に座っているオリュンポスの頭を撫でた。
「この犬さ、以前オペアしていた家で苛められてて可哀想だったから連れ出したんだけどすごく頭がいいの。ほら見てて―」
望詩は傍に転がっていたテニスボールを掴みアイロンコーブの渚に投げ入れた。
するとオリュンポスは猛然と走り出し勢いよく海に飛び込むとそのボールを咥えて戻ってきた。
「ほんとだ…」
路男磨が感嘆の声を漏らすと
「もっと遠くでも取ってくるのよ」
と望詩は今度はずっと沖に投げた。
それもオリュンポスはあっという間に拾ってくる。
「へええ、よく鍛えられてるな。俺が投げても拾ってくるかな?」
「もちろんよ」
と望詩は濡れたテニスボールを路男磨に渡した。
「よぉし、今度はちょっときついぞ!」
路男磨は全力で腕も折れよと遠投した。
岸から随分離れているが今度もオリュンポスは勇敢に泳ぎボールを口に咥えた…とその時…犬の後ろの海面がずああっと盛り上がった。
そして、その盛り上がった潮を切り裂くようにあのおぞましいフカヒレが現れたのだ。
フカヒレは最初は一つ、それが一つ、また一つと増え、三つのフカヒレが猛然とオリュンポスに向かって進んでいた。
「キャーッ、早く!オリュンポス早く逃げるのよ!」
望詩は絶叫し、路男磨と幸も手を振り回し同じように叫んだ。
オリュンポスは気付いているのかどうか必死に手足をばたつかせ岸を目指している。
「あと少しだ頑張れ!」
路男磨は叫んだ。
もう岸まで10メートルも無い。
だが…サメは浅瀬をもろともせず突き進んできた。
そして、オリュンポスの後ろ足にガブリと噛み付いた。
「キャーァァァ!」
望詩は狂ったような声を上げた。
おびただしい血が水面に浮かんだ。
オリュンポスの口からテニスボールがポロリと落ちた。
「キュウ~ン」
ああ憐れオリュンポス、あとはよってたかってサメに食われるだけだった。
やがて犬の頭が海の中に沈んだ。
可哀想に忠犬オリュンポスは海の藻屑と消えてしまったのだ。

「う、うううううう…」
望詩は膝をガクンと地に着き号泣した。
「今までこんな事は一度もなかったのに…」
彼女の涙は滝のように頬を伝い、オリュンポスの消えた海に流れ落ちている。
〈俺のせいだ…〉
路男磨も愕然とし、咄嗟にかける言葉が思いつかなかった。
ふと横に立つ木を見ると、その幹にサメに注意と書かれた、なんともテキトーなサインがかかっている。
images (2)

「こんなの見て本気にする奴なんていねーよ!」
だがサメは浅瀬にもやって来るのだ。
シドニーハーバーには浅瀬を好む獰猛なブルシャークやタイガーシャークがわんさと生息している。
パラマタリバーのアイロンコーブもまた例外では無い。
どうやらオリュンポスを襲ったのはヒレの色から察してブルシャークと推察された。

「ううううう、あたしこれからどうやって生きていけばいいの……」
望詩は肩を震わせて泣き続けている。
「ごめんよ望詩、俺が悪いんだ。俺が遠くに投げちゃったから…」
路男磨は望詩の肩に手をかけた。
「ううん、あたしが悪いのよ。あたしがあんな芸仕込まなければ…」
と望詩は肩に置かれた路男磨の手を握った。
「オリュンポスの代わりは俺が責任を持ってやるよ」
路男磨はそうするしか望詩に詫びようがなかった。

こうしてその夜から、路男磨もまたライクハートパークの公衆便所に泊り込むはめになってしまったのだ。

ワーホリの覚醒4同居1

2013/02/08 18:56|連載小説ワーホリの覚醒4TB:0CM:0
セントラルの駅から西へ歩いて20分、クレイグのバチュラーユニットはチッペンデールにあった。
路男磨はそのビルの玄関口に立ち、ロックの付いていないアルミドアを開け中に入った。
部屋はファーストフロアにある―と聞いている。
「なんで二階がファーストフロアなんだろ?」
と彼は薄汚れた階段を上がりながらふと思った。
豪では一階をグラウンドフロアと呼び二階をファーストフロアと呼ぶ。三階はセカンド、四階はサードと…。
「日本式にすればいいんだよ、紛らわしい…」
と呟く傍ら
〈いや、まてよ…〉
とその呼称をロジカルな観点からもう一度考察してみた。
〈日本で言う一階とはすなわち地面…何もなければ地平線…それを階とな?〉
路男磨は歩みを止め上ってきた階段を見つめた。
〈階段とは階が段に連なっているから階段…ということは…〉
やはりどちらが論理的であるかといえば、グラウンドフロアであり、強いて階を使うならゼロ階であろう。
〈生まれたばかりの赤子がゼロ歳であるのと同じ理屈か…〉

と、埒も無いことを考えながら、路男磨は“二階”の北側にあるクレイグの部屋のドアを叩いた。
返事は無い。
おそらく仕事に出かけているのだろうと思ったが、ためしに押してみると開いた。
しかし中にクレイグはいない。
「相変わらず無用心な奴だ…」
と呟きながら路男磨は中に入った。
部屋はバチュラーといわれるだけあって非常に狭い。
シングルベッドと備え付けの棚机で部屋の七割を占め、その横に小さなキッチネットが付いているだけだった。
路男磨が寝るとすればは通路しかないが、そこに寝てしまうとトイレやキッチネットへのアクセスを塞いでしまう。
さてどうしたものかと見回すとベッド横のガラス戸の向うに小さなベランダが付いているのが見えた。
そのベランダに出て、試しに体を横たえると棺桶に入ったように身動きができないが、足を曲げれば何とか眠れそうだった。
ただ一目瞭然の安普請で、コンクリートには無数のひびが入っている。
豪に来てから二度ほどベランダが落ちて人が死んだと言うニュースを聞いていた。
「犬死はゴメンだぜ…」
路男磨は叩いたり、跳ねたりしてその強度をチェックしたが、暴れない限りは大丈夫なようだった。

路男磨はバックパックをクレイグの部屋に残し外へでた。
パラマタロードを西へ。
まだ昼過ぎであったが麗蘭には特に何時に行くとも伝えてなかったので、ポツポツと彼女の住むアナンデールへ向かって歩いていた。
バスが何本も横を過ぎていく。
そのバスに乗れば五分で着くのだが、金欠の路男磨はそのバス代すら節約しなければならなかった。

「ロオマさん―」
すぐ右を通り過ぎていったタクシーの中から聞き覚えのある声が聞こえた。
空耳かな?と思っているとそのタクシーが10メートル先に止まり、中から英語学校のクラスメイトであった姉小路幸が降りてきた。
「ロオマさん、シドニーに戻ってたんですか?」
幸とは英語学校のお別れ会で、アスオが彼女の頭にカレーをぶっかけて以来である。
ほんの半年ほど会っていないだけだが、以前とは別人のように大人びて見えた。
色気づいたとか化粧が濃くなったとかいうのではなく、一皮剥けたといった雰囲気が彼女の全身を包んでいた。
「うん、今さっき戻ったんだ。学校は終わったの?」
「今日は昼で退散です。どうせ午後はたいした事しないし…午前もだけど…」
「英語うまくなった?」
「ぜんぜん。あ、そうそう今から望詩ちゃんに会いに行くんです。一緒にどうです。会いたがってますよ」
と幸は生き生きとした口調で言う。
〈望詩か…〉
懐かしい友達で会いたくはある。
しかし彼は誰よりも先に麗蘭に会いたかった。
望詩にも可愛い気を感じた事はある。
しかし彼女は今や女としては過去の人だった。

「彼女今頃BBQやってますよ。金曜だけど大学はまだ休みだから、金土日とやってるんです。最近はお好み焼きが馬鹿受けして以前よりもずっと忙しいんですって!」
「BBQ?」
路男磨には話がのみ込めなかった。
彼は望詩が公衆便所に住み、公園のBBQ台で商売している事を知らない。
路男磨のきょとんとした顔を見て、幸はその事を手短に説明した。
「美味しいお好み焼き食べたくありません?」
その一言は路男磨の胃に染み渡るように響いた。
空腹なだけでなく、彼は長い間日本食なるものを口に入れていない。
「でも俺行く所が…」
路男磨が顔をしかめて振り切ろうとすると
「車でほんの15分ですよ。少し食べて話して、帰りもタクシーで送ってあげます、ね!」
幸は路男磨の袖を引っ張り強引にタクシーに乗せた。

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